股関節の痛み
HIP PAIN

股関節の痛み
股関節の痛みについて
当院では、股関節の痛みに対して専門的な診断と治療を行っています。
これまで大学病院などで股関節専門外来を担当してきた経験を生かし、保存療法から手術療法まで、患者さんの状態に応じた最適な治療を提案します。
股関節の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
股関節のしくみ

股関節は、骨盤と大腿骨をつなぐ関節です。骨盤側の「寛骨臼(かんこつきゅう)」がお椀のような受け皿になり、太ももの骨の先端である「大腿骨頭(だいたいこっとう)」が球状にはまることで滑らかな動きを可能にしています。
軟骨は両者の間でクッションの役割を果たし、体重による衝撃を吸収します。
歩行時には体重の約2倍、階段昇降では約4倍、立ち上がる動作では約6倍もの負担が股関節にかかります。
そのため、軟骨や骨の損傷・変形が起きやすい部位でもあります。
股関節に痛みを引き起こす主な疾患
- 変形性股関節症
- 大腿骨頭壊死症
- 股関節唇損傷
- 外傷(大腿骨近位部骨折、恥坐骨骨折など)
変形性股関節症
病気の概要
股関節の軟骨が徐々にすり減り、関節が変形していく病気です。
女性に多く、中年以降に発症し、加齢とともに進行する傾向があります。
主な原因
1.寛骨臼形成不全
股関節の受け皿が浅く、大腿骨頭を十分に覆えていない状態です。
日本人女性に多く、変形性股関節症の約9割がこれに関連しています。
この状態では、関節の一部に負担が集中し、軟骨の摩耗が進行します。
2.加齢・肥満・過度な運動負荷
長年にわたる立ち仕事やスポーツ、肥満などにより関節への負担が増え、軟骨がすり減ることがあります。
高齢になると、姿勢の変化(骨盤後傾など)によっても関節への負担が増します。
症状
- 脚の付け根・お尻・太ももの痛み
- 動き始めや長時間の歩行・立位後の痛み
- 進行に伴い関節の可動域が制限され、靴下の着脱やしゃがむ動作が困難になる
- 安静時や夜間にも痛みが出る
- 脚の長さに差が出る
診断
問診と身体診察、X線検査を中心に行います。
軟骨の厚みはX線では見えませんが、関節の隙間の狭小化で診断できます。
必要に応じて、CT・MRI検査で詳しく確認します。
治療
保存療法(手術以外の治療)
- 生活指導:体重管理、杖の使用、靴の工夫(クッション性の高い靴)
- 薬物療法:痛み止め(消炎鎮痛薬)、外用薬(湿布・塗布薬)など
- 運動療法・リハビリテーション:関節の可動域を保つストレッチや筋力強化を理学療法士が指導します。股関節周囲筋を鍛えることで、進行抑制が期待できます。
- 温熱療法:血流改善や筋緊張緩和を目的に行います。特に有効な運動として「健康ゆすり体操(ジグリング)」があります。股関節を小刻みに動かすことで関節液の循環が促進され、軟骨の健康維持に役立ちます。
手術療法
保存療法で改善が難しい場合、以下の手術を検討します。
- 骨切り術:関節温存を目的とし、若年層で軟骨が残っている場合に適応
- 人工股関節置換術(THA):軟骨が消失した場合に適応。変形した関節を人工関節に置き換え、痛みを大きく軽減できます。
※近年は人工関節の耐用年数が向上しており、40〜50代でも適応となるケースがあります。
大腿骨頭壊死症
病気の概要
大腿骨頭(股関節の球状の骨)への血流が低下・途絶することで骨が壊死し、潰れてしまう病気です。
壊死の範囲が広がると股関節の形が変形し、強い痛みを生じます。
主な原因
- ステロイド薬の長期使用
- アルコールの過剰摂取
- 大腿骨頚部骨折などの外傷
- 明確な原因がない「特発性」も多い
症状
- 脚の付け根の痛み
- 急な発症で歩行困難になることも
- 壊死が進行すると股関節の可動域が低下
診断
初期はレントゲンで異常が見えにくいため、MRI検査が有効です。
壊死の範囲が大きいほど進行リスクが高くなります。
治療
保存療法では、杖の使用や鎮痛薬で痛みを抑えながら経過を観察します。
痛みが強く、壊死範囲が広い場合は手術を検討します。
手術療法
- 骨切り術(若年層に適応)
- 人工股関節置換術(広範囲の壊死に適応)
担当診療科
整形外科(主担当)/ リウマチ科 / リハビリテーション科
人工関節センター(人工股関節置換術などの専門治療を実施)
※症状や疾患に応じて、関連各科が連携して診療を行います。
出典
一部内容は「日本整形外科学会」発行資料および関連専門学会の診療指針を参照しています。
